住職から
こんにちは。今回は前回の副住職のではなく、住職についてのインタビューをまとめさせていただきました。ぜひ一度読んでみてください。
建宗寺が開かれたのは、大治町史によると平安時代だそうです。そのころから数えると、実に1000年の歴史を刻んでいることになります。私で27代目の住職となり、副住職の息子が28代目を担うことになります。こう言うと、代々親子によって引き継がれてきた寺だと思われるかもしれませんが、そうではありません。私たちの宗派である曹洞宗いわゆる禅宗は、もともと師匠と弟子の間で受け継がれてきました。いまのように、子が親の後を継ぐ形になったのは最近です。私は、歯科医と住職を兼任しています。寺を維持し、生活を守るためには、僧侶のほかに仕事を持つ必要があったため歯医者の一面をもちながらお経を読んで参りました。しかし、振り返ってみると、守り一辺倒で、寺として地域に出ていく積極的な活動はやり切れていなかったと感じています。そこに目を向け、寺の活動を広げる挑戦をしようとしているのが、後継である息子の28代目です。 そもそも、私が寺を受け継いだのは、祖父への恩返しの気持ちがあったからです。祖父は現在の私と同じように、教師をしながら寺の住職を務めるという二足 のわらじを履いていました。本来なら息子、つまり私の父が後継ぎでしたが、寺とはまったく違う道に進んだため、孫の私が後継となったのです。 祖父は、私が大学の歯学部に進学する費用を出してくれました。当時、歯学部は大変な人気で、誰でも行けるところではありませんでした。祖父が教師の仕事で家計とお寺を守ってくれたおかげで、いまの私があるのです。その感謝を、いまでも忘れてはいません。 祖父は、私が修行を終えて寺に戻った3年後、安心したようにこの世を去りました。私が28歳のときでした。私が若くしてお寺を継いだのには、こうした理由があります。 40年近く僧侶をしていると、ご家族の世代交代や時代の変遷などが垣間見えてきます。最近特に思うのは、仏壇のないご家庭が増えたこと。「置く場所がないから」と言って、親族の遺骨を斎場に置いて帰られる人もいると聞きます。 私は思います。こうして私たちが存在しているのは、ご先祖さまがいてくれたからだと。弔いは、それを改めて思い起こすとき。どんな形であれ、生んでもらった感謝を表してほしいと願っています。そのお手伝いを、私たちお寺にさせていただきたいというのが切なる想いです。 仏教には、何十にも及ぶ宗派があります。しかし、もとをたどればみな同じ仏教。宗派を問わず、さまざまな方に来ていただけるお寺でありたい。これから先、どんなに代が変わっていこうとも、皆様の心のよりどころとして、地域に必要とされる建宗寺でありたいと思っています。
いかがでしたでしょうか。実は私だけではなく住職と違う職業をもっている方はたくさんいらっしゃいます。「坊主丸儲け」という言葉があり、一般の方の中にはお寺の人イコールお金を持っていると思われている方がいますが、実際にはお寺以外でも収入を得ているお寺が全体の3割ともいわれており、今は「檀家離れ」、「お墓じまい」など決してお寺の業界は以前と比べても良い状況とは言えないと思います。しかし、だからこそ私たち宗教者は仏教を通して何が出来るか、何を伝えるかを問うべきだと思います。また、お寺をどんな場所にするか今まで以上に考えるべきだと思います。建宗寺としてこれから先、時代の変化でお参りの形や供養の形が変わっても、先祖を敬う気持ち、それを通して今の自分を大切にする気持ちを育てられるような寺院を目指したいと思っています。ぜひお近くを通った際には一度お立ち寄りくださいませ。